安全な「ものつくり」って…… [日記・雑記]
私は元来設計屋なので、物を作るときに安全性について悩むことがある。
エンジンの設計では、
・装置・システムにおいて、誤操作・誤動作による障害が発生した場合、常に安全側に制御する。
・装置やシステムは必ず故障する。
・ユーザは必ず誤操作をする。
ということを前提にした「フェイル・セーフ(fail safe)」という考え方を使う。
航空機の設計では、
システムの一部に問題が生じても全体が機能停止するということなく、機能を縮小しても動作し続けるようなシステムを設計する。
という「フォールト・トレラント設計 (Fault tolerant design)」をベースに考える。
この二つの思想がいつも作品製作時に、心の中の”ひっかかり”になってしまう……
★革作品の場合
例えば【ウォレットとウォレットレイン】の組み合わせ。
おっちょこちょいの私は、よくドアノブやバイクのウィンカーにウォレットレインを引っかけることがある。。。
普段は「おっと!危ね~」で済むのであるが、、、
「引っかかった相手が動いているものだったら…」
「もっと頑丈なものだったら…」
と、考えるとゾッとすることがある。
私の場合、ジーンズのベルトループが切れて大きな事故は起きないと思うのだが、それでもジーンズも安いものではないので、ショックは大きいのだろう…
もし、ユーザーさんの立場で…
・ジーンズがウォレットより高価なものだったら?
・ウォレットレインをベルトループではなく、ベルトに直接フックで引っかけていたら?
などと考えるとやはり怖い。。。
師匠からは「作品を頑丈に作れ!」と言われてはいるのだが…
ウォレットとウォレットレインのつなぎ方について、どこか弱い部分を考えた方がいいのかもしれない…
・ドロップハンドルを使えば、革本体から抜けるので安心なのか?
・革ループにリングをつけてウォレットレインを付けると、革切れか縫い目ほどけで安心なのか?
自分が作ったものだけが壊れるならば、修理ができるのでユーザーさんのお叱りだけで済みそうである。
ま、”安全性”ばかり考えて、本来の”機能性”を失ってしまっては本末転倒ではあるが。。。
この点は”腱鞘炎”が治ってからいろいろ考えていきたいと思う。
子どもの頃に見た西部劇映画で落馬したガンマンが引きずられていく姿が脳裏に浮かぶのである……
( ̄□||||!!
★天然石作品の場合
【ワイヤーでつないだネックレス】
いざというとき、丸カンの部分が一番弱いのでここから壊れてくれると安心である。
ナイロンワイヤーを使うのも安全策だと思う。
【水晶ポイントを使った作品】
先端部が尖っているのでペンダント等では、子ども接するときには注意が必要である。
【針金で包んだ作品】
ニッパ切断部等の端部やワイヤーの取り回し等、なるべく出っ張りのないように形状を考える。
肌に触れればケガの元…
服では破れが生じる(セーターが一番怖いな…)
【丸玉をワイヤー通しして作った携帯ストラップ】
不用意にもストラップがに引っかかってしまった場合、携帯電話のストラップ穴が壊れると不便である。
最悪、電話本体が壊れる恐れがある。
石屋のご主人からは、長年の経験で「φ0.5×1本がベスト!」と言われている。
「とある店」では、1本ワイヤーでは不安だからという理由からφ0.38×2本(石の中穴とワイヤーの当たりで切れるというのが論点になった)
私が使用しているワイヤーは、φ0.45とφ0.38
断面積から強度計算をしてみると、びみょ~なところ…
ところが、剪断加重からみると同材質&同より数ではφ0.45の方がφ0.38より約1.6倍も安全!
ここで私は”屁理屈”を入れて、φ0.45×1本で作ることにしている。
↓屁理屈↓
①φ0.38×2本の場合、”張力”が同一(2本とも伸びを含めた長さが同じ)でないと、引っ張り加重に対してφ0.45×1本の方が強い。
②石の中穴との当たりの問題は剪断荷重から考えると、φ0.45×1本より、当たり面がφ0.38×2本並列でもの方が弱い。
③一番弱い部分は、断面積が小さくなるワイヤーのカシメの部分なので1本だろうと2本だろうと荷重がかかったときはここがウィークポイントなのでφ0.45×1本の方が多少安心である。
いやぁ~、
長年の経験とはすばらしいものである。
(「とある店」には「とある店」の思想があるので、話すつもりはあませんが…)
【丸玉にゴムを通したブレスレット】
ワイヤーと同様の考えからφ0.6×2本ではなく、φ1.0×1本のシリコンゴムを使用。
また、”よりゴム”は交換時に丸玉穴に詰まってしまい、抜き出すときに石が割れた経験があるため使いたくない。
以上のような考えを持ちながら、製作思想を考えていきたい。
が、しかし……
ここで「天然石」の場合、安全性だけでは済まないこともあるのである。。。
”心の問題”
「とある店」では、ワイヤーやゴムが切れたときのユーザーさんの”心の傷”を心配していた。
「石が身代わりになってくれた。」と理解してくれるユーザーさんも多い中、かなり凹んでしまう方もいるとういうのも事実…
石によって救われたという方にはショッキングな出来事であるのは確かである。。。
アクセサリーと考えるのか?
お守りと考えるのか?
おまじないと考えるのか?
非常にデリケートな部分である。
形あるものは壊れるもの!
でも、それを割り切れない人もいることを考えなくてはいけない。
”革”と”天然石”
一見関係ないものではあるが、両者とも
人に役立つ。
人に安らぎをあたえる。
人を守る。
という同一面がある。
そう考えるといい加減なものは作れない!
簡単に壊れても、頑丈であっても、人を傷つける場合があることを考え「ものつくり」をしていきたいと改めて思うのである。
でもねぇ…
そうは言っても…
妥協点が…
いつも難しいんですよねぇ…
o( ̄ー ̄;)ゞウーム
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